▼風景とは

ここで言う「風景」という言葉は、成り立ちとして以下の要素をもちます。
①主観的(私的)であること。
②「景色」は主に観る対象としての自然に特化したものを指すことが多いのに対し、「風景」は
目に映るありのままの場面や情景としての自然に加え、街並みや人の様子が入ったものを指す。

 

▼「ランドスケープシアター(風景演劇)」のポイント


1)遠景から観る
人物をメインに近距離で観る舞台とはちがい、この作品は遠景から眺めるようにして鑑賞します。
観客の視点が特定のものだけに集中しない、つまりパフォーマーだけでもなく建物や自然
だけでもない、ぼんやりとした
視点に観客を導き、俳優がその空間に溶け込んだり、ときに
浮き上がったりしながら、観客の目線をさまざまなところに誘うことで見せる手法です。
遠くにあるものに目を凝らすことで、最初はぼんやりとしていたものの輪郭が徐々にはっきり
と見えたり、風景に対する解像度が上がり様々なものにフォーカスが合っていくような体感が
あるかもしれません。

その中で、観客は何を見るかを主体的に選択し、そこに独自
の物語を見出してゆきます。
物語を追いかけるのではなく、物語が自分の中に湧き出るように。


「風景によせて2020」より


2)観客が、自由に切り取りながら観る
風景という言葉自体がもつ成り立ちからして、この作品群において、
「どこを観なければならない」という決まりはありません。
目の前に広がるパノラマを、観客が自分自身の「フレーム」で切り取ります。
この作品をとらえるまなざしを、自由にデザインするということです。
「ランドスケープシアター(風景演劇)」は、時間や季節を反映しながら刻々と変わってゆく風景を舞台にしているため、
キャンバスは少しずつですが、日々どんどん変わっていきます。
一度として同じ風景はなく、その時・その瞬間にしか存在しえない、
サイト・スペシフィックな作品です。

建物、乗り物、自然。ここで生活する人、訪れた人。
開けっぱなしの窓、ゆらめく洗濯物、屋根の上の猫。
ススキがそよそよ風に揺れているところ。
山肌にうつる雲の影が、いつのまにか動いていくところ。
鳥の群れが、毎日決まった時間に飛び立つところ。
そのほか、目には見えないけれどそこに確かに感じるあまたのものを、
あなただけのフレームを手に。



3)コミュニティでつくる
「ランドスケープシアター(風景演劇)」は、一人では決してできません。
風景を舞台にしたパフォーマンスにおいて、その場所で出会った皆さんの
ご協力がなければ、創作できないものです。また、そこに住む人や偶然
訪れた人も、みんなが風景に欠かすことのできない出演者だと言えます。
その日、観客が目にする風景に関わる多くの方々とのつながりと感謝の中に、
この作品は成り立っています。


 


4)「集う」から「立ち会う」へ

コロナウイルスの影響で、元々複数の人々が集うことで実現する「上演」という形態
について、改めて向き合わざるをえない状況がありました。
「ランドスケープシアター(風景演劇)」は、遠景から観るというその特徴により、現況
下でも観客同士や
パフォーマーとのフィジカルディスタンスをとって鑑賞できる作品になっています。
パフォーマーと観客がともに密集することなく、作品に立ち会うことができます。


___今後も、徐々に追記していきます。

 

 

ソノノチについて

京都を拠点とするパフォーミング・アート グループ。2013年1月より活動を開始。ユニット名は、「その後(のち)、観た人を幸せな心地にする作品をつくる」という創作のコンセプトにちなんでいる。

屋内外を問わず空間が内包する膨大な情報を、観客の中に流れる時間や記憶と結びつける独自の演出手法で作品を発表している。初めて観るのにどこか懐かしいと感じたり、何気ない生活を垣間見ているような感覚を味わえたり、内なる感情を静かに揺さぶることに特徴がある。
近年は、空間そのものを作品として捉えるインスタレーションの手法を用い、劇場だけでなく、ギャラリーやカフェ等での上演を行ったり、絵画や音楽など、他ジャンルのアーティストとのコラボレーションも行う。

2019年には、静岡県掛川市で開催される現代アート展「原泉アートデイズ!2019」に演劇部門のアーティストとして初めて招聘。現地で滞在制作をし、空き家を使って、リアルと虚構の狭間を行き来する集団生活を見せる6時間の展示型演劇作品を発表。また「原泉アートデイズ!2020〜不完全性〜」の中で発表した、集落の丘から見下ろす風景全体を舞台にした作品『風景によせて2020』が、コロナ下における新しい表現形態として話題を呼んでいる。

物販部「ソノノチノチ」では、公演の演目(ストーリーや登場人物)にちなんだ様々なグッズを製作。物を通して演劇に興味をもってもらうという、観劇のきっかけづくりを行っている。2016年よりKAIKAアソシエイトカンパニー。