今回、ソノノチの風景によせて2021のクリエイションアーカイブを担当することになった、劇団三毛猫座のnecoです。
これから4回に分けて、同じくアーカイブ担当の駒(企画団体〈世界平和〉)と共に、クリエイションをアーカイブすることについて、ソノノチの稽古場についてのコラムを書いていきます。


『アーカイブ』とは一般に、資料・記録を保存活用し、未来に長く伝達していくことを言う。
舞台芸術作品を、またそのクリエイションの過程をアーカイブする、というのは一筋縄にはいかない。

そもそも演劇とは、空間、照明、音響、時間、人間の動きなどと、その作品を構成する要素が非常に多く、その実体を真に体験・理解しようと思うと、実際に現場で鑑賞するしかない、というのが、舞台芸術をする人々の本音であり、事実だろう。それは現代においては非常に非効率的でありながら、代替する体験が無いからこそ、遥か昔から演劇をはじめとした舞台芸術は残ってきた。

しかしながら、昨年から今年にかけて世界中が見舞われたパンデミックにより、それはあっけなく崩れ去ってしまった。
人が集うことができなくなった時、あらゆる舞台が中止を余儀なくされた。その時に人々に舞台芸術を届けたのはWeb上での映像公開である。

世界中の劇場やカンパニーがYouTubeやVimeoをはじめとした映像配信サイトでこれまで上演されてきた記録映像を配信した。(それと同時にZoomなどを利用したオンライン演劇も多く試みられたが、記録とは別物あるのでここでは触れない。)
舞台作品を映像に収めて、上映・保管することはこれまでも広く行われてきた。それはあくまで舞台を収めた映像作品であり、舞台芸術を見る体験とは全く違った物であることは間違いないだろう。しかし、パンデミックの最中に、それらの記録が芸術の体験として人々に対して機能したことも明らかである。

今回、ソノノチの中谷さんから「(この作品のクリエイションを始めた時点で)作品を制作しても、上演できるかわからない状況の中、創作プロセスの記録が必要だと考えた」「上演ができたとしても、この作品が現地まで観に来れない人に対して、作品を届けるための記録を作りたい」と伝えられ、『風景によせて』のアーカイブを作ることとなった。

「創作プロセスの記録」とあるように、『風景によせて』のアーカイブで目指していることは、先に述べた映像作品としての舞台の記録ではない。
なぜこの作品ができたのか、稽古・ミーティング・本番まで一貫して記録することを目標とし、アーカイブを作成する。それは、ソノノチという団体が今をどのように捉えて、作品を作ってきたのかを明らかにすることでもあり、作品の記録であると同時に、この時代の一つの側面の記録ともなるのではないだろうか。

また、アーカイブは未来に向けて残すもの、というのが基本の考え方だが、作品を届けられない同時代を生きる人たちのための記録というのが、この時代に求められるアーカイブの一つの姿なのかもしれない。

アーカイブ担当:neco(劇団三毛猫座)